2020年7月12日日曜日

Movie: Greyhound (2020)


 しばらく劇場へ足を運べないために、家では偶に旧作品を見直すことが多かった。そんな中で、ネット配信サービスではこういった新作を提供してくれるのはありがたい。
 思ったよりも短い尺の作品だが、頭からお尻まで船酔いと戦っているような気分で見る映画になっている。もちろん映像技術に頼るところが多い筈だが、魚雷や爆雷の部分にデフォルメがあったとしても意外と違和感がなかった。
 トム・ハンクスもコロナ被害者だったこと、イラン周辺の問題をペルシャ湾に移して考えたりすることなどを踏まえ、世界が争いの前に差し掛かっている雰囲気を持ちながら見ると、第二次世界大戦中の中にある現代との共通点さえ感じ取れるようだ。
 「眼下の敵」という映画があったが、これはそれよりもスリリングといっていい。


2020年2月15日土曜日

Movie: 1917 (2019)


 ドルビーシネマ で鑑賞。久しぶりに臨場感のある映画が体験できた。ワンショットで展開されるロールプレイングゲームのようなドキドキ感に加えて、たとえ嘘だとしてもリアル感で捻じ伏せられるシーンの数々。見方によってはテーマパークのアトラクションにも感じられるのだが、場面は1917年の戦時中の若者を描いている点が下敷きにあるので重苦しさを最後まで引きずってしまう。この作品が作品賞でオスカーを取れなかったのは、この重苦しさにあるのかも知れないが、実際は裏取引に流された協会員の能天気な選考結果に違いない。
 「キリング・フィールド」「アザース」「グラディエーター」と並んで引き摺る映画に挙げたい。




2020年1月11日土曜日

Movie: Ford v Ferrari (2019)


 ここ最近では非常に面白いストーリーラインと、演出を持った作品と言える。Steve McQueenの映画との時代比較をしても面白い。
 印象的な場面としては、フォード社長がいきなりラインを停止させるところとか、副社長の召使い的な行動は、今の世界でも近いものがあるし、現場とトップとを繋ぐ中間管理的な役割となるShelbyには共感する部分が多かった。アメリカンらしくレンチを投げたり、いきなり殴りかかったり、ハンマーでドアを塞いだりと大げさな立ち回りは多いのだが、いずれも痼りを残さない展開は良かったと思う。

 それにしても、当時のレギュレーションではスタート位置からゴールまでの距離が順位を決めるということに驚いた。F1ではスタートラインがあるのでグリッド位置との関係はないはずだが、スポーツレースもいろいろと問題をかかえながら運営していた感じも伝わってきたので、エンタメだけでなく人物や組織に着目して見るのも面白いだろう。

2020年1月5日日曜日

In This Corner (and Other Corners) of the World [Special Advance Screening Version] (2019)


 近年、日本のアニメ作品も海外の方に目にしていただける機会が多くある。異世界アニメのようなカテゴリならば過剰な説明は不要なのだろうが、今回のこの手の映画においては、日本人でも難しい「感覚」があり、ある程度個人解釈で落ち着かせてしまうかもしれないが、ただ誤解はして欲しくない。自分は幼少期に長ノ木に住んでいたので、海を臨む急な坂を歩いてみて分かる生活感はこの映画の重要な要素のように感じるし、人と人の距離感、共存する為の日本人に備わったモラルの世界観も重厚な下地になっているのである。こういったベースがあるからこそ、2016年版よりも1時間長くなった本作もすんなり見れてしまうのだろう。
 何時も思うのだが、庶民生活と戦争とが背中合わせでありながら、ある程度間合いのある描き方がとても好きである。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に


2019年12月21日土曜日

Movie: Star Wars: Episode IX - The Rise of Skywalker (2019)


 ドイツ帝国を相手にする日本の侍が宇宙を舞台に西部劇風のアクションで戦う物語。こんな感じなのだろうか。シリーズ的に言えば、最初の3作品の頃が技術的に途上であっても魅力溢れていてよかったと思うのだが、時代を過ぎると不必要な技術がかっての興味を薄めさせてしまい、なにを対象に興味を持っているのかが見えなくなってしまった。
 冒険活劇から始まったこの物語。以前はスッキリとした展開だったはずなのだが、途中でドロドロしたものが目につくようになり、最後には叙情性を持たせてまとめたようだ。

 さて、9話目で最終話になった本作品。エピソードイIVの展開(いわばルール)を基本的には守っているが、やはり活劇というより感情劇になっているため玉座の間のような大円団にはなっていない。戦いの密な描写を捨てて、レイやレンによるロミオとジュリエットの流れが待っている。求めていたものとは違うのが気になったが、まずは完結できたことを祝いたい。

2019年11月30日土曜日

Movie: The Irishman (2019)


 この映画の興味は二点に絞られた。
 一つは70年代のマフィア映画をゴッドファーザースタイルで描いているところ。淡々場面は切り替わって行くのだが、ここぞといった場面でのゴッドファーザー感は半端ない。そしてもう一つがビジュアルエフェクトである。中年から老年までのデニーロをはじめとする登場人物の年齢操作は「驚き」以外の何者でもない。

 こういう映画を劇場でやっても、集客できないと思われる今の日本の映画興行事情を悲しく思うのである。



2019年11月2日土曜日

Movie: Yesterday (2019)


 もし、60年代にビートルズが世界を席巻していなかったら、彼らの音楽自体が存在していなかったら、そういった仮説をミステリアスな場面設定で描いた作品である。これは、一種の異なる世界線に入り込んだフィクションなのだが、多分、設定としてはジャック以外の人々上でも一応、ビートルズは存在しており、突然、記憶や証拠など全て消えたという状況設定なのだろう。逆に、全くビートルズが存在しなかったら、という設定だったらという興味も沸くので、この手法には色々と期待できるものがあった。
 最も面白かったのが、エド・シーランやケイト・マッキノンといった脇役の絡みと、検索サイトの結果表示。脚本が生きていた印象深い部分である。

 ビートルズ音楽を挟んだ英国と米国の場面の差も関心を持った点。プレスリーを扱えばどうなるのかも興味あるところだ。

2019年10月20日日曜日

Movie: Joker (2019)


 アメコミ原作ではあるが、知らなければ立派なサイコ・クライムストーリーである。背景は60~70年代らしく思えるので、時代に合った社会問題と合わさった狂気の世界を生み出している。狂気の世界と言えば、ベトナム戦争を題材とした狂気表現が、音楽や絵画でも示された頃なので、映画の中でのブラウン管テレビや、落書きに塗れた地下鉄などが物語に
重みを加えていた。

 面白い話ではあるが、同時に社会の在り方も考えさせる映画。ブルースとゴッサムの名前が緊張を解いてくれるものだった。


2019年9月1日日曜日

Movie: Once Upon a Time... in Hollywood (2019)


 これは素晴らしい映画。特に60年代とか70年代の映画とか風俗文化に肩入れしている人には間違いなくジャストミートな映画である。有名2大スターが、これを引きたてているのは間違いないが、それよりも当時のイメージに拘っている部分について、当時の俳優のエピソードなどを頭の中で紐解きながら慎重に見ていく流れが作られて、楽しさで満たされる。しかも、終盤ではタランティーノ特有のタッチが待ち受けているため、アクションだけを期待していた人でも、そこだけで満足するに違いない。
 音楽もまた良い選曲が続く。最後の場面は、映画を観る前の成り行きと異なっていると思った人も多かったかもしれない。これは監督がヘルター・スケルター的ではなくアウト・オブ・タイム的に仕上げたという意味で評価できる。


 クレジットにあったけど、”TORA! TORA! TORA!”のポスターってどこかで登場したのかな?

2019年8月25日日曜日

Movie: Rocketman (2019)


 日本ではエルトン・ジョンの知名度がどの程度か、わからない。少なくとも「ユア・ソング」あたりは知っているとは思えるが、一連の曲とアルバムの時系列、エルトンを支えるスタッフを知らない場合、単なる幸福ではない家庭から有名になった天才の異常な足取りでしかない。この映画には’70年代から’80年代の彼のロックシーンでの位置付けが重要な要素となるため、ある程度の知識がないと「すごい」のか「変人」なのか、それ以外なのかが未解決のままになってしまうと思う。
 映画ではジョン・レノンから芸名を借りるシーンがあるが、実際のレノンとの共演場面とかがあってもよかったのでは。ジャイルズ・マーティンだったらやると思っていたが。