例えば今の日本との境遇に近い内容だとしても、別に日本の参議院選挙に限りなく近づけるような公開の仕方でもなさそうだし、結果的に全く盛り上がらない時期の公開だったので、真剣に入り込めなかった。真っ先に頭に浮かんだことは、「Spielberg作品」という効果はもうあてにできないということ。それは40代を過ぎたかつての豪腕投手のようなもので、球筋がはっきりし過ぎる反面、斬新さが無くなっているのだ。この作品は、一般的な生い立ちものではなく、アメリカ合衆国憲法修正に力を注ぐ時期を描いている点はスポットがぶれない意味で評価できるものの、舞台劇のような撮り方から、今までに無かったようなアプローチが有るかと期待したのだが、残念ながら満足のいくものではなかった。もちろん、無難なつくりではあるものの、決して名作の域におかれる作品ではないと思った。
そういった感じのなかでDaniel Day-Lewisの演技は素晴らしく、またシンクロするかのようにSally Fieldの演技も相乗効果をなしていたのは、救いのひとつである。
南北戦争への興味のある自分としては、「Glory」のような作品に出会いたいと思っている。ここからいろいろと影響を受けてサウスカロライナにあるサムター要塞まで見に行ったこともある。そういったこともあって、今回の「Lincoln」にも接点をいろいろと求めたのだった。