日本では、もうSpielberg作品だからといって、価値は生まれない時代になったのだろうか。最近の作品にしろアカデミー賞にノミネートする力はあっても、以前ように日本では話題に上らない。おそらくIndiana Jones的なものなら芸能誌がこぞって取り上げるのだろうが、日本人から見てテーマに隔たりのある作品が続いているためか、おとなし目の公開に見える。今回の作品。鑑賞する価値は十分あると思う。しかし商業的な間口の有る無しでSpielbergの価値が問われるのもおかしな話である。
ちょっとネタバレとなるかもしれない。かつて「Schindler's List」でも見せた生死を問うスリリングな場面が待っている。設定を反服させ、同じことを押し通したり、或いは急な変化に持って行ったりする独自のパターンは健在であり、実に感心してしまう。乗り物から見る壁(柵)越えの場面、新聞の記事からDonovanに向ける乗客の表情、スパイ交換における保険の引用、加えて「橋」の意味あいなど、すでにわかっている監督手法なのだが、簡単に受け入れてしまうのだ。
困惑した場面として、「スパイは殺せ」という風潮の中で弁護するDonovanを非国民扱いにしたこと対し、スパイ交換となると英雄に持ち上げられるところ。勝手すぎ、偏りすぎと思うのだが、現実的には(今も昔も、日本であっても)これが当たり前とされそうなのが歯がゆい。
Mark Rylanceの演じるAbelは味があって最も印象に残った。