2015年9月20日日曜日

Movie: Kokoro ga sakebitagatterunda (2015)


 予想に反して、泣ける映画の構成ではなかった。スタッフも、「あの花」の泣ける流れに頼らず、むしろ一転させたような群像ものにしたと察する。
 「あの花」では、オープニングの「青い栞」のもつ日常感がしっかりと土台になりながら、物語の非日常の違和感で巧く色づけし、その相互の反応で心の琴線に触れる。。。そんな感覚が素晴らしかった。加えて、クライマックスで流れるエンディング「secret base」の持つ力。やや見方を変えれば舞台劇的な演出だったが、今回の映画では、その舞台劇をミュージカルというベクトルにしたものになっている。
 暫く観ていると、ストーリー中に日常的な土台が見当たらないからか、距離を置いた目線で見てしまった。もちろん、一つ一つは現実としてありそうな場面だし、秩父の風景がその効果を盛り上げてくれるのだが、高校生が聴く昭和歌謡が明示しているように、なぜか馴染めない異種的な印象は拭えなかった。
 エンディングもGalileo Galileiあたりでやって欲しかったのだが、ちょっと自分の期待とは外れたカタチとなっていたようだ。

Movie: Ant-Man (2015)


 アントマンについてはよく知らなかったのだが、60年代からあるコミックからということで、マーベルのネタはまだまだ底が深そうだ。
 とはいえ、コミックス的な奇抜な導入とはいえず、むしろ一般的なアクション作品の導入ぽくなっていたようなので、近くの小学生くらいの客がやや飽きていたようだ。アントマン自体も凄い能力を持っているわけではなく、虫サイズのヒーローであり、やや冴えない表現になりがちなところをCGで引き延ばしていた点は否めない。前半が前半だけに後半は落ち着いた表現のほうが良かった気がする。印象としてはドタバタ感を残して終わったような作品だった。ただエンドロール中と後で今後の展開のさわりがあったので、このシリーズも広がっているものだと思うが、ハルクやアイアンマンのようなフロントマンになるには、暫く時間が必要のようだ。
 やっぱりMichael Peñaは存在感がある。

2015年9月8日火曜日

Movie: East of Eden (1955)


   これだけ、新作に見たい映画がないと、昔の名作で気持ちを一新するのも有りだなと思い、さいたま新都心に出かけた。

    以前見たことがあるといっても、結局は吹き替えで大幅にカットされ、しかもコマーシャル付きのバージョンを見た、小学生頃の思い出レベルである。家庭のテレビで映画を見るときいつも思うのは、あまり気持ちを入れることができないという点。他の人はどうか分からないが、馴染んだ空気に安心してしまい、浅い記憶しか刻めないのも理由だろう。今回、劇場で見ることで、これまでの「(一応)見た」という思い出を消去したかったことも感想理由にはある。

   創世記をモチーフにしたのは有名な話だが、冒頭から「有り得ない」主人公の行動に名作感が薄れる思いだった。ところがこれが後に生きてくる展開になろうとは…意外であり当然でもあり。この映画は、エピソードの一つ一つに名シーンが隠れているのではない。現代では失われた様な、人物像の描き方こそが惹きつけられる一番のポイントだろう。

   創世記では殺める内容のところを、この映画では戦争に行くという意味に置き換え、悲劇的な点を描いているのだが、今見ると、悲劇という意味では(戦争の一番嫌な部分である)国と国との差別、憎しみの下りの強調があり、テレビでよく見る偏向的な正当性を押し付ける風潮、特に最近の国連事務総長の非公正的な行動や反戦?デモなどとラップして映ったりもした。つまり、国とか人種を肯定していながら、戦争を否定することは、究極の矛盾の表れであり、それらしいデモも安っぽく映る。この作品は、人のあり方として、カインの目、アベルの目の両目から見た本当の世界観を問う物として、今の時代に十分価値をなす物と思えた。