2013年3月18日月曜日

Movie: Flight (2012)


  The Rolling Stonesのおなじみの音楽などを含めても、この映画には70年代前後の懐かしい「教訓映画的」スタイルがある。外面だけで自分のあり方は全うできない...善くも悪くも自分らしさとは何か、自分自身とは何かを問い正す映画になっており、事前に航空パニック映画的なイメージを持っていた観客には、そのギャップが良い方向へ働くことだろう。

 映画では2つの視点が絡む。ルールを背にした立ち位置で考える点と、ルール以前の「人として」あるべき姿として考える点である。前者には酒やクスリが、後者には最善の選択肢がそれぞれ紐付けられるのだが、加えて後者は、夫婦、親子、愛人、友人、仕事社会などの人間関係の深くにまで「最善」が映し出されようとするところが面白い。この2つの対極的な視点がこの映画を半端な展開に終わらせていないところである。

 日本では例えば「ブラックジャック」であり、アメリカ映画では「Death Wish」のような話とも関係があると思うし、今の報道の焦点でもある航空機パーツの不具合の問題、中国高度成長と格差や公害の問題などもこの映画の内容と接点を有する。残念なのは、こういった深い部分の意味での映画宣伝がされないところ。地方ではなおも航空ものアクションとして捉えられる傾向にありそう。

2013年3月13日水曜日

Movie: Zero Dark Thirty (2012)


  関心の高いニュース報道の記憶との接点を整理しながら観る映画になっているので、通常の政治色のある映画よりもアプローチしやすい。

  あの911以降、アフガンやイラクの実態を描くドキュメンタリータッチのライブ感に溢れた映画を数多く観てきたが、ほとんどが立ち位置に疑問を投げかけるものだった。標的ビンラディンの筈がいつの間にかフセインになっていたりで、良識を逸脱していても正論という名の下に混乱させられる我々がその時代にいたのである。

  しかしこの映画は、その中でも明確なコマンド実行ものとして、ストレート感覚で鑑賞できる。 チャプタータイトル を交えつつ、時系列に、じっくりと展開させて行くのだ。
  だが、多くは我々が知っている10年に比べて、思ったより淡白な印象を受けるだろう。手法は間違っていないのだが、バックグラウンドがあまりに平坦すぎて、飽きるギリギリ一歩手前とも言えるため、所々に思いっきり引いた絵が必要だと思えてくる。

  ラストは見せ所。クールな作りは好感が持てた。

2013年3月12日火曜日

Movie: A Certain Magical Index: The Miracle of Endymion (2013)


  劇場用アニメではやはり、テレビ版の登場人物を如何に配置するかを要素とする傾向が強いと見えて必然性を多少は無視した形でスクリーンに放り込まれる。言わば「ありがち」なのである。
  ただ、このありがちな形をむやみに否定はできないようだ。物語の中でレールガン連中との接点もそうだと思うが、期待度でいえばメインキャストでダンジョン攻略するよりは、仲間を交えてバラエティ満載で多角的にアプローチする方が、転換部の挿げ替えが利便的に働くに決まっている。 更に「マクロス」以降、劇中歌の充て方をミュージカルスタイルに応用できる寛容な環境もAKBを引き合いに出すまでないが、本質からの逸脱はあれども活性化には繋がるだろう。
  近未来学園都市モノにあっても、いろいろとアナログ的な小道具は、一種のノスタルジーにして、いつまでも変わらないで欲しい未来感なのだろうか、稀にイメージする100年後の蓄音機に在り方に似ている。
  邦題「とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇跡」

2013年3月11日月曜日

Movie: Django Unchained (2012)


いきなり懐かしい曲が冒頭にかかる。60年代のFranco Nero主演の映画の曲だ。

 いつもながらTarantino映画は「恨み節」を使った例の如く意外性のある懐かしさを連れてくる。

 序盤のDjangoの形成。中盤のCandie家の探り合いからのガンファイト。終盤の反撃。まさにこれまでの西部劇的起承転結テンプレを見事の展開した作品。

 興味あるポイントは、時代背景が南北戦争前という微妙な時代であること。南北戦争で思い出されるのはC.Eastwoodの「The Outlaw Josey Wales」という作品。こちらは北軍を復讐相手としていたが、「Django」は黒人解放側視点のためアメリカ合衆国(北軍)寄りの立場である。加えて北軍には例えばSigelのようなドイツ人の将軍も存在したことも作品とリンクしてくる。そういった意味では最近のTarantino作品はちょいちょい歴史に絡めてくる。見た目は軽い感じに映るが、実際は重要や史実をモチーフにしたりしているようで気が抜けない。
 もうひとつのポイントは今の時代背景でやれば滑稽となってしまう要素を、派手に爽快にできる時代背景を使っていとも簡単にやってのけていること。むろん過去の作品のオマージュ的要素も加担していることは言うまでもなる。

 それにしてもSamuel L. JacksonのStephenは味のありすぎる演技だ。
 
 Ken Nortonの出る「Mandingo」という映画も昔みたことがある。いろいろとリンク多すぎ。


2013年3月10日日曜日

Movie: Argo (2012)


山陰で間違っても劇場公開しない「注目作品」を、埼玉と群馬にて立て続けに観る。まずは昨年末公開され、現在再上映中のオスカー受賞作品の「Argo」。

 雰囲気的には政治色満載かと思いきや、意外にもスリリングなエンターテインメント色となった作品。冒頭でのイランとアメリカの位置づけ説明は、実にスマートに導入部へ誘うものなのだが、途中からハリウッドの色が目立ちだつと、ややリアル感覚が遠のいてしまう。要は、演出の見せ所が逆に疎ましく思い、脱出する6人について、実際にこれだけ危機一髪な展開ではなかったはず...との勘ぐりが強くなるからだ。だが、その裏側で面白いと思ったのは、観客の視点だけでなく脚本上でも茶番的に扱われている点。なるほど、見る側と作る側の心をシンクロさせる運びが、作品を優等生に仕立てているようでもある。

 ところで見ていた気になったのが、「Argo」という映画。別の作品で「アルゴ探検隊の冒険」という映画を知っているが、時代的にはこれより10年以上も古いものなので、本作中の設定とは異なる位置づけなのかも。もしかしたらスターウォーズ・デコイなのかも。