The Rolling Stonesのおなじみの音楽などを含めても、この映画には70年代前後の懐かしい「教訓映画的」スタイルがある。外面だけで自分のあり方は全うできない...善くも悪くも自分らしさとは何か、自分自身とは何かを問い正す映画になっており、事前に航空パニック映画的なイメージを持っていた観客には、そのギャップが良い方向へ働くことだろう。
映画では2つの視点が絡む。ルールを背にした立ち位置で考える点と、ルール以前の「人として」あるべき姿として考える点である。前者には酒やクスリが、後者には最善の選択肢がそれぞれ紐付けられるのだが、加えて後者は、夫婦、親子、愛人、友人、仕事社会などの人間関係の深くにまで「最善」が映し出されようとするところが面白い。この2つの対極的な視点がこの映画を半端な展開に終わらせていないところである。
日本では例えば「ブラックジャック」であり、アメリカ映画では「Death Wish」のような話とも関係があると思うし、今の報道の焦点でもある航空機パーツの不具合の問題、中国高度成長と格差や公害の問題などもこの映画の内容と接点を有する。残念なのは、こういった深い部分の意味での映画宣伝がされないところ。地方ではなおも航空ものアクションとして捉えられる傾向にありそう。