率直に評価すれば、アニメ作品としてテレビシリーズからの流れを熟知しているファン層なしには成立しない内容であることには間違いない。その一方で、ここまで単作として成熟したものを提供してくれることは嬉しい限りである。
もちろん無知識でも観れることは間違いないが、どうしても楽しむための要素がテレビシリーズやゲームソフトからくるために、これだけ多くのキャラクターが存在することもあり、やはり、ひとりひとりの個性を知っておくべきだと思う。そう考えるとアニメ産業の今後について、根の張ったファン構造が、ここ最近の浅く広くの文化の流れに相反する部分となり、実に危惧されるのである。
映画の前半はあまりにも鉄板な幸せ展開。初見の人にもある程度の人物像が把握できると思うが、煤けた事務所と有名アイドルのアンバランス感覚まで摑み取れないかもしれない。中盤からはサポートダンサーをマージした流れ。この辺からメインキャラの存在が薄まってくるが、焦点がキャラの個性を「ジグソーパズルの1ピースでも欠けたら完成は無い」ことと同様の主張を交えて演出が絞られているので、心配していた逸脱感は生まれなかった。この辺は見る人の視点によると思うのだが、自分的には春香の立ち位置をブレさせなかった点を評価する。
ライブシーンは短かったものの、躍動するアングルで捉えられ(CGもそれなりに効果をあげていた)、この映画の一番の「見せ場」となっていた。