2014年3月16日日曜日

Movie: The iDOLM@STER Movie Kagayaki no Mukougawa e (2014)


 率直に評価すれば、アニメ作品としてテレビシリーズからの流れを熟知しているファン層なしには成立しない内容であることには間違いない。その一方で、ここまで単作として成熟したものを提供してくれることは嬉しい限りである。
 もちろん無知識でも観れることは間違いないが、どうしても楽しむための要素がテレビシリーズやゲームソフトからくるために、これだけ多くのキャラクターが存在することもあり、やはり、ひとりひとりの個性を知っておくべきだと思う。そう考えるとアニメ産業の今後について、根の張ったファン構造が、ここ最近の浅く広くの文化の流れに相反する部分となり、実に危惧されるのである。

 映画の前半はあまりにも鉄板な幸せ展開。初見の人にもある程度の人物像が把握できると思うが、煤けた事務所と有名アイドルのアンバランス感覚まで摑み取れないかもしれない。中盤からはサポートダンサーをマージした流れ。この辺からメインキャラの存在が薄まってくるが、焦点がキャラの個性を「ジグソーパズルの1ピースでも欠けたら完成は無い」ことと同様の主張を交えて演出が絞られているので、心配していた逸脱感は生まれなかった。この辺は見る人の視点によると思うのだが、自分的には春香の立ち位置をブレさせなかった点を評価する。

 ライブシーンは短かったものの、躍動するアングルで捉えられ(CGもそれなりに効果をあげていた)、この映画の一番の「見せ場」となっていた。



2014年3月10日月曜日

Movie: 12 Years A Slave (2013)


  Steve McQueenという監督の特長が認識できる作品であった。例えば小説で言うなら章のはじめを印象づける感覚の風景シーン。これがまたBGMとの相乗効果を形成しつつ、奇妙だったり、穏やかだったりする。かつての映画ファンがスピルバーグのカメラアングルに関心を抱いた時のように、McQueen映画の接写アングルには個性があるのだ。そして重要な場面での唾も飲み込めない空気を漂わせる長いショットもそれにあたる。しかし、最も心動かされたのは、映像のつなぎと曲と雰囲気がコーラスでいうオブリガードのようにオーバーラップする場面。その一方では、時間経過を伝える場面は様々にして潔い。時間の制約がなければこうならなかったのかもしれないが…。

    奴隷問題として比較されそうなのが、かつてのテレビシリーズの「The Roots」。これを同テーマの代表作と考えても何十年か前の映像の多くはヒストリカルなものとして扱われてしまっている傾向があった。今回の作品は、むしろ人間としてのあり方を伝え、聖書(神のことは)や自然の営みが人間の存在とのコントラストを強調していたようだ。最近の映画では感じなかった「不思議な効果」を感じ取れたのは実に収穫だったが、トータル的にはブツ切れ感は残った。

   久しぶりにPaul Danoのようなクセのある俳優を確認できた点も収穫だった。