2012年10月26日金曜日

DB/DVD: Drive (2011)


 年に2、3本は重い作品に出会う。これもその一本であるが、描き方が通常の重さとは異なる部類もの。意外性が前面に出た。
 まずは、まるでかつての日本映画のような間合いがあった。いったい何を見る側に求めているのか、或は考えさせるのか、凝視するだけでは片付かない何かがある間合いである。その間合いとおどろおどろしい音楽により、息を呑むのシリアスな展開かと思わせるのだが、実は「Kill Bill」のようなサスペンスの隙間にあるフェイクも垣間みえたりするし、対決の場面においても、意外なほどに無防備だったりするストレートさが異空間を作っていたりする。とどめはエレベータ・シーンのようなキスとバイオレンスのギャップ、全体的なライティングのあて方、シーンとシーンの連続性をあえて絶つかのごとき潔い場面転換など、興味のベクトルは多彩に広がる。単純にバイオレンスとかサスペンスとかカーアクションでは片付けられない作品になっていた。

 途中では女の亭主との厄介な問題がおこることを期待していたが。。。この辺でも普通と違いなにかがあった。


2012年10月22日月曜日

Best-Selling Album in USA…I don't think you know it.


 アメリカで年間トップに輝いたアルバムの歴史は面白い。

 60年代中までは、映画音楽やイージーリスニング、ジャズのアルバムが年間のトップを占めていた。


 ポップ・ロックアルバムとしては、モンキーズの「More Of The Monkees」('67)が最初となる。それ以降はロックアルバムが当然のように顔を出すのであった。


 ちなみに、ビートルズやローリングストーンズ、レッド・ツェッペリンのような英国でトップ常連となったアーティストは全米アルバムチャートのトップにはなっていない。
さらには、'77に相当売れたイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」や'80年代に旋風を巻き起こしたマドンナの「ライク・ア・バージン」も年間トップにはなっていない。

 そう考えると、アメリカ人受けするアルバムは、映画、ジャズ、ポップ、ダンスなどの流行の波の中で年齢層に拘らないアルバムであることに加え、流行の連れてきたライバルの有無もキーとなっているようだ。例えば、’83のマイケル・ジャクソンの「スリラー」は他の時代的にかなり売れたアルバムを簡単に蹴散らした。「スリラー」は’83、’84の2年連続でトップとなったとんでもないモンスターアルバムであるが、2年連続アルバムとしては過去2回存在しているのも驚きだ(’57、’58のマイ・フェア・レディ(ブロードウェイ版)と’62、’63の「ウェスト・サイド・ストーリー」サントラ)。




 昨年、全米でアルバム年間トップとなったアデルの「21」。実は英国人としては、’97のスパイス・ガールズ「スパイス」以来の14年ぶりであったそうな。過去英国人としては、’68のジミ・ヘンドリックス、’74~’77のエルトン・ジョン、ピーター・フランプトン、フリートウッド・マックがピークだったのだが、これは英国サウンドを受け入れたという時代(’60年代)を隔て、アメリカナイズされた英国サウンドの完成型というスタイルが主流ともいえる時代だった。



 その後、ディスコ、パンク、テクノ、ユーロ、そしてビジュアル化メディアへのアプローチとして注目されるのが’80前半。映画にもなったピンク・フロイドの「ザ・ウォール」はビジュアル志向のコンサートとして歴史に残る。’82の「エイジア」は英国の元プログレロックバンドのメンバーとして異例ともいえるトップを獲得。シンセサイザーのデジタルパラメータ化などサウンドアプローチも売り上げを後押しした感あり。




 ’90年代になるとほとんどがジャネット・ジャクソンやバックストリート・ボーイズなどの自国アメリカのアーティストがトップを占める中で、ヒット映画のサウンドトラックも売れた。’93「ボディガード」、’94「ライオン・キング」、’98「タイタニック」、いずれもトップに輝いた。




 2000年代ではストリート系など新しい分野への傾向が強くなる。リンキン・パーク、50セント、アッシャー、マライヤ・キャリー、テイラー・スウィフトなど。特にエミネムは’02と’10の年代を飛び越してトップをとっており、これは凄いことである。



 やはりなのか、アメリカで年間トップとなるアルバムは英語圏の国であるが、アメリカ、英国以外にもカナダがランクインされている。そういえばニール・ヤングの「ハーベスト」’72は名盤だ。

 そういえば、若者に人気のマイリー・サイラスの父親ビリー・レイ・サイラスの「サム・ゲイブ・オール」も’92の年間トップアルバムを獲得している。





 この傾向とグラミー賞のアルバム・オブ・ジ・イヤー賞を見比べてみるのも面白いかも。ちなみにアデル「21」はもちろんダブル受賞である。




2012年10月9日火曜日

Movie: The Hunger Games (2012)


  話題先行型の映画。過去、「バトルロワイアル」等の殺し合い、生き残りものは多様にあったが、この作品には、どちらかといえば王道モノとして期待していた。しかし、その期待はかんたんに崩されたのだった。

  構成はテンプレート的、序盤の緊迫感薄の流れを歓迎しなければならなかったのは、後半の予想を超える場面展開を信じていたからかもしれない。SFでありながらも.中世の抒情的な感覚もあることも期待の範囲だった。

  ところが、実際は余りにも残念。チートという単語が頭を駆け巡るほど王道から掛け離れたものでしかなかったのだ。その残念さは映像効果にも飛び火した。例えば、炎のCGが安っぽかったし、猛獣がオブジェに上れないなどの違和感も満載で、現在の映画市場のあるべき姿にまで疑念がおこったほど。
  ただ、デザインには、力をいれているようなので、そういう感覚で見るなら受け入れられるかもしれない。

  映画の世界観は、実は、中国共産党政府という感じ。