これは観ていて不愉快になることこの上ない映画であった。ScorseseとDiCaprioコンビの作品だからこの上ない上級な環境で作られているにもかかわらず、内容がB級以下の展開と素材で満たされており、とんでもない作品になっていた。
3時間近い上映時間も軽々と見切れたのは、不愉快と思わせつつ「しめしめ」とほくそ笑む有名コンビの罠に嵌ってしまったのかもしれないからだな...と思った。冒頭はまだ落ち着いた展開である。スクリーンから毒は漏れてくるが、それでもまだいい流れになっている。しかし馬鹿丸出しのエピソードは中盤からこれでもかと思う程に畳み掛けてくる上、毒に塗られたスクリーンと言ってもいいくらいの流れに変化、一種のローラーコースタームービーへ昇華。むかつきまくったこの映画も見終わると何故だか楽しさしか残らない。スタッフの巧さに負けた映画とも言える。
この映画では、日本でも多く居そうな羊を狙ったオオカミ企業の実情をおもしろおかしく実話と関連させた展開にしている。こういった映画を観るにつけ、回転数を上げ、メーターを振り切った走りを続ける乗用車の末路が浮かぶ。
法を潜って得られる大金。どう考えても人間として誇れるものではない。個人的にはこの映画の主人公は世の中にシワを作るカスでしかないと思える。ただ、今では犯罪者であっても格好が良ければ賞賛され、関心が低ければ許される時代でもある。実に怖さを暗に示した映画でもある。
Robbie Robertsonが音楽にかかわっているだけあって、時代の泥臭い面を音楽でもサポートしていた。