2014年2月17日月曜日

Movie: The Wolf of Wall Street (2013)


 これは観ていて不愉快になることこの上ない映画であった。ScorseseとDiCaprioコンビの作品だからこの上ない上級な環境で作られているにもかかわらず、内容がB級以下の展開と素材で満たされており、とんでもない作品になっていた。
 3時間近い上映時間も軽々と見切れたのは、不愉快と思わせつつ「しめしめ」とほくそ笑む有名コンビの罠に嵌ってしまったのかもしれないからだな...と思った。冒頭はまだ落ち着いた展開である。スクリーンから毒は漏れてくるが、それでもまだいい流れになっている。しかし馬鹿丸出しのエピソードは中盤からこれでもかと思う程に畳み掛けてくる上、毒に塗られたスクリーンと言ってもいいくらいの流れに変化、一種のローラーコースタームービーへ昇華。むかつきまくったこの映画も見終わると何故だか楽しさしか残らない。スタッフの巧さに負けた映画とも言える。
 この映画では、日本でも多く居そうな羊を狙ったオオカミ企業の実情をおもしろおかしく実話と関連させた展開にしている。こういった映画を観るにつけ、回転数を上げ、メーターを振り切った走りを続ける乗用車の末路が浮かぶ。
 法を潜って得られる大金。どう考えても人間として誇れるものではない。個人的にはこの映画の主人公は世の中にシワを作るカスでしかないと思える。ただ、今では犯罪者であっても格好が良ければ賞賛され、関心が低ければ許される時代でもある。実に怖さを暗に示した映画でもある。

 Robbie Robertsonが音楽にかかわっているだけあって、時代の泥臭い面を音楽でもサポートしていた。


Movie: The Butler (2013)


 TV以外でOprahを観れるのは珍しい限り。Jane FondaやLenny Kravitz、Mariahあたりも出ているので、別の意味で楽しめそうだった。
 感想としては、改めて多くの疑問が生まれた。"Roots"でもわかるとおり米国の奴隷史はアフリカから連れてこられた民族と欧州からアメリカに根付いた民族との悲劇的コントラストであった。しかし、なぜ肌の色で優劣の構造ができたのか?かつて黄河、ナイルなどで生まれた文明を知っていながら、今に至る不可思議な偏見は歴史的に必然だったのか?を問いたくなった。
 最近日本の隣国が何年も前の件を今再び持ち上げ、さも世界中で日本だけの問題であるかのように海外へのアピール活動を続けている。もし突然、世界からアメリカに対して奴隷制、差別への賠償問題を前面に出したらどうなるだろう。結局、時間の隔たりは別の脚本を作り上げ、今の都合で問題化されることになる。そこには本質という言葉も無くなってしまい...。この映画のなかには、今、世界で案じられている多くの問題を含めつつ一つのストーリーが出来上がっている。美味しい部分は、時代毎に大統領から執事に語られるボヤキや相談事にある感じである。

 Forest Whitakerの演技は観ていて清々しいものであった。Cecilの喜怒哀楽人生がなかなか染み渡った表現を評価したい。


2014年2月9日日曜日

BD/DVD Rush (2013)


 かなり昔だが、ルクセンブルクにて観光バスを降りた周辺のショップで、メタリックなステッカーを売っていた。当時はジェームズ・ハントがマクラーレンで活躍していた頃。もちろんハントのステッカーを買った。この映画をきっかけにして、その頃を思い出そうと頑張りつつ、鑑賞してみた。

 冒頭、ハントの70年代のヘスケス時代が映され、そこにはポスレスウエイトも居る。やがて「ニューカマー」となって登場するラウダ。ここでの二人の絡み。なんとも言えぬシーンだ。

 Ron Howardの得意な夢ある展開に仕立てた点により、実話ではあるものの更に人間ドラマとして膨らませているところが良い。もちろんF1自体がドラマチックなことは言うまでもない。'88、'89でのプロストとセナの争いはその代表格。映画が単に脚色の賜物ではないことを理解している人は少なく無い筈。この映画と強くラップするのが、ラウダ視点での「危険」というテーマであり、実際に起ったベルガーの炎上事故やセナの事故死から強いインプレッションを得たと推測される場面が多々でてくることから、何か教訓めいたメッセージ性も感じられる。
 もうひとつは、ハントとラウダの人間像の対比的な演出により、伝統的童話めいたストーリーとして受け入れやすくなっていることも注目したい。ドイツGPでのドライバーミーティングでのコンディションを見据えた対応でも二人の差がでてくる。レースでは有名すぎるほどとなった炎上事故の場面も再現されており、映画を離れて現実の苦い思いが噴出される。明らかに二人の立場に優劣となって描かれるのだが、これはこれなりの思いで観てしまうのも、実際、Ron Howardはこういったパターンで突き進まないタイプだとはよくわかっているからでもある。予想通り?日本GPでは、今までを覆すような結果にもなっており、映画としての持ち味を十分もった実話ドラマになっていた。

 日本GPがクライマックスになっているのが痛痒い展開だった。ひらがなの「たいれる」まで再現されているのもまた痒さを感じてしまった。

  フッテージでは実際のニキからオーストリア・イントネーションの教えを受けるエピソードだとか、三菱EVO8によるレーストラック撮影の場面もある。こういうのが実に楽しかった。