2014年6月16日月曜日

Movie: Noah (2014)


  今も尚、旧約聖書の有名な物語を真剣に史実というアプローチで探究する諸氏がいることに驚かされるが、人間への啓示となる痕跡が時代時代の何処かに残されていることの根拠が、歴史そのものの定義と意義への回顧を理の中で変換されながら今の人間が存在するならば、案外に嘘とは言い切れないのかもしれない。

  この映画は、聖書モチーフの映画の中では現代の空想色が強いためか、共感できない類の感情が阻害要因になっているのだが、人間の黒さについては「Black Swan」「The Fountaim」の監督作品だけあって裏表的な演出は評価できる。神の下にいる人間。そこには善悪という概念は無くなる印象を持たせているものの、神が人間を悪と見る観点に立とうとするならば、何処かで矛盾にぶち当たるのであるが、この悩みは、やっぱり空想世界という言葉で流すことが一番妥当なのだろう。


BD/DVD: Le salaire de la peur(1953) & Sorcerer(1977)


「恐怖の報酬」の 1953年版と1977年版の2本を観た。

(やや、ネタバレあり。including spoiler.)

  最初はHenri-Georges Clouzot監督でYves Montand主演作品。
   この映画の持ち味は、設定である。仕事が容易ではない雰囲気から啀み合う刺々しい雰囲気の酒場を軸としながら人物の様相が明かされていく流れにおいて、その背景の質感がしっかりしているため、グイグイ物語に引き込まれる。部分的にアクション場面に違和感はあっても、展開が面白いので問題は起らない。

 一方は、William Friedkin監督で Roy Scheider主演作品。「French Connection」や「The Exorcist」で話題をさらったFriedkin監督作だけに当時としては期待が高かったと思う。しかし改めて1953年版と並べて観たところ、こちらの映画の特徴は人物が集結する以前の設定にあることのみで、トラックを準備するあたりからなんだか設定が端折られており、1953年版のような緊迫する場面がほとんど見られない。崖の場面にしてもアッサリし過ぎている感じが否めないし、山賊の場面もどことなく定石的である。
 エンディングなどにやや違いはあれども、基本的に1977年版は1953年版をトレースしている内容なのでやや安心できるものの、どうしても比較して観てしまうところで1977年版にややがっかりが生じてしまう。
 1977年版の音楽はタンジェリン・ドリームである。これは売りだった点。エンドロールは「The Exorcist」風でもあり、ここは好きだった。