2015年7月13日月曜日

Movie: Still Alice (2014)


 Julianne Moore演じるAliceと彼女の夫と子供たちの関係。一見普通であり、家族愛に満ちた幸せな家庭でもあり、権威もあり、何もかもが充実しているように見える構図なので、鑑賞する立場で言えば、やや見上げる目線でストーリーを追っていくことになるが、そこもまたこの映画の問題点提起にもなっているようだ。
 家族それぞれが持っている主張、プライド、考え方の距離感などが恰もサスペンス映画のように、講演の場面や観劇の場面、更には乳児を抱く場面でのAliceのしぐさに絡んでくるので、見ている側が受ける緊迫感が半端ではない。そしてAliceと娘二人との距離感が逆転していく様は残酷でもあり、必然でもある不思議な表裏の世界観。加えて夫の妻に寄り添う姿勢がありながらも何か心が自分の世界に飛んでいる雰囲気もまた効いていた。特にKristen Stewartの表情の変化もまた着目すべきである。

 最近の映画にはあまり音楽面で着目していなかったのだが、このピアノを加えた四重奏の演奏がとても印象的。ある意味でベートーヴェンの第九の第三楽章的な安堵と不安の感覚に近いものがあった。

 ここ最近出会ってなかったこの雰囲気の映画。もっとメインにしてもらいたいし、本来映画の持っている社会性を問えば、現状の映画ビジネスの鬱屈感から抜け出したと思うはずである。