2016年7月31日日曜日

Movie: Trumbo (2015)


 最近、「芸術」という言葉が似合う映画を見なくなった。いや、たぶん近くの劇場公開作品に「芸術作品」が皆無に近いからかもしれない。70年80年には芸術作品と呼べるものが多くあったのだが、今では感覚を麻痺させる作品ばかりである。次第に映画から離れていく自分がいるのだが、そろそろ「映画」文化の終焉が近づいているのかもしれない。

 この映画の「赤狩り」を、今の「移民排斥」「黒人排斥」「銃規制」に当てはめると、本質はその裏の裏にある組織的な壁が見えてくる。時代はなんらかの形で繰り返す。とても参考になった映画だ。

 Dalton Trumboは昔のパンフレットなどでの日本語表記ではドルトン・トランボで通っていた。自分は「Johnny Got His Gun 」で初めて彼を知ったが、赤狩りの詳細事情までは知らなかった(ブラックリストにCharlie Chaplinの名もあったそうだ)。今回の「Trumbo」では、有名人や有名作品がぞろぞろと登場するのである意味で非常に楽しい。例えばEdward G. Robinsonなどは、彼が出ているというだけど「Soylent Green」を見に行ったくらいだ。

 映画では、投獄シーンなどはあるものの、瀬戸際を表すような部分は無い。その分、家族のシーンが協力的な印象のほうにウエイトを置きたかったのだろうか。それに合わせるようにキャラクターのイメージが良い具合に出ているようだ。Otto PremingerにKirkDouglasなどなど。この映画の苦労した部分が伝わってくるようだった。


2016年7月16日土曜日

BD/DVD: The Rape (1982)


 amazon tv stick を安く手に入れたので、最初の一本目としてこの映画を選んだ。映画デビュー2年目のYuko Tanakaが初々しい。かつてのATG映画では「サード」を思い出すYoichi Higashi監督の作品。

 電話のベルがよい効果を出しているのも、こういう時代だからこそかもしれない。面白いのはレイプされた日に鳴る電話と、ラストで鳴る電話の対比。映画が表に出そうとするひとつのポイントなんだろう。
 この時代は、まだ携帯電話、パソコンなどは無く、防犯のためのカメラも無かった。住宅地にも空き地が目につき、人通りもまばらな頃を察すると報道には出てこない問題が山のように隠れていたと思う。
 裁判のシーン以降、流れが変わってくる感じが面白い。まず、被害者が容疑者のように扱われ出す点。そして容疑者の弁護士が話を掻き回してくる。さらに登場人物のそれぞれの裏事情が明らさまになり、被害者でさえも「絶対的」なものが薄れてくるのだ。こういった流れは、技術の進歩を遂げた現在でも同様に社会の不条理の普遍性が根を張っている。解決したいが解決できないモヤモヤした部分。ここを描いたところは評価したい。

 男と女のダイアログ。冷静に聞いていると、あまりにも違和感のある内容にとれるが、あの頃を思い出すと、納得する面もあるのが不思議だ。


 結婚式後に登場する車は自分も当時乗っていた車。懐かしかった。