最近、「芸術」という言葉が似合う映画を見なくなった。いや、たぶん近くの劇場公開作品に「芸術作品」が皆無に近いからかもしれない。70年80年には芸術作品と呼べるものが多くあったのだが、今では感覚を麻痺させる作品ばかりである。次第に映画から離れていく自分がいるのだが、そろそろ「映画」文化の終焉が近づいているのかもしれない。
この映画の「赤狩り」を、今の「移民排斥」「黒人排斥」「銃規制」に当てはめると、本質はその裏の裏にある組織的な壁が見えてくる。時代はなんらかの形で繰り返す。とても参考になった映画だ。
Dalton Trumboは昔のパンフレットなどでの日本語表記ではドルトン・トランボで通っていた。自分は「Johnny Got His Gun 」で初めて彼を知ったが、赤狩りの詳細事情までは知らなかった(ブラックリストにCharlie Chaplinの名もあったそうだ)。今回の「Trumbo」では、有名人や有名作品がぞろぞろと登場するのである意味で非常に楽しい。例えばEdward G. Robinsonなどは、彼が出ているというだけど「Soylent Green」を見に行ったくらいだ。
映画では、投獄シーンなどはあるものの、瀬戸際を表すような部分は無い。その分、家族のシーンが協力的な印象のほうにウエイトを置きたかったのだろうか。それに合わせるようにキャラクターのイメージが良い具合に出ているようだ。Otto PremingerにKirkDouglasなどなど。この映画の苦労した部分が伝わってくるようだった。