2016年6月19日日曜日

Movie: Irrational Man (2015)


 まるでかつてのJean-Paul Belmondo主演作品のような日本語タイトル。「教授のおかしな妄想殺人」という酷すぎるタイトルを知らなければ、きっと別の角度で楽しめただろう。Woody Allenは確かにコメディ調を巧みに扱っているが、意図としては全く違うところにあると思うし、実際に、欧米では犯罪ドラマとして扱われている作品である。

 実に惜しい感じがした。中盤までの流れは個々の考えを出しつつ交わりあい、面白く作られていると思うのだが、Abeの行為が追求されだした点から、いろいろな面が粗く感じたのである。ラストは駄目押し。ちょっと踏ん切りがつかなくなった。特に、Jillの人間性が問題に思える。彼女はAbeがロシアンルーレットで自分の頭に銃口を向けることを目にしていながら、その後、レストランで他人の裁判の問題に聞き耳を立てた。「嘘」の話から始まったAbeの講義に惚れ込んだJillならば、彼の意図と展開をある程度、読み解けたとしても不思議ではない。むしろ犯罪行為超えた世界観を持つ人物として興味を持っていたのではないのか?と思ってしまう。もし日本語タイトルの「おかしな」を付けるならば、女性側に付けた方がいい。



 その一方で、考えさせられる作品として評価していいのかもしれない。今の現代で問題にされている犯罪、社会問題、人と人の距離、様々な課題が凝縮されていたからである。