涙が止まらなかった。ビートルズのヒストリー的なドキュメンタリーは数多くあったのだが、今回の作品はちょっと違うようだ。Ron HowardじゃなくてMartin Scorseseだったらどうしただろう。もっとライブシーンが満載だったのだろうか?と想像したりもした。Ron Howard監督は、当時の有色人種の問題を初めとする社会情勢と、たった五年のビートルズのツアーイヤーを巧みに繋げて来た。涙の理由がそこではない筈。むしろElvis Costelloの「Rubber Soul」に対するコメントの方が涙に近いかも。いずれにしてもビートルズのツアーの苦痛がよく伝わって来る編集だったと思った。
本編の後に、あのスタジアムライブが見られた。実は、70年代の後半に「Magical Mystery Tour」と併映で劇場上映されている。その時は「シェア・スタジアム」という名称だった。SHEAは誰もがシェアだと思っていたが、SHE-A(シー・エイ)という発音でシェイが本当だったようだが、当時は気にならなかったのだろうか。
ビートルズは実際、腕のあるバンドだった。それは’61年のライブあたりで確信できた。しかし今回のツアーライブによって、音楽の向かい方の違いが明らかになり、強行スケジュールの中で(本当の)音の届かない演奏をしなければならなかった4人の気持ちを汲み取って、自分の涙になったのだろう。(それでもステージの演奏は魅了的であることに違いない)
スタジアムライブではボタンをきっちり締めたポールとジョージ。ボタンをしなかったジョン。ボタンをひとつ外したリンゴ。この辺からも「気持ち」が伝わって来るようだった。