2016年9月22日木曜日

Movie: The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years (2016)


 涙が止まらなかった。ビートルズのヒストリー的なドキュメンタリーは数多くあったのだが、今回の作品はちょっと違うようだ。Ron HowardじゃなくてMartin Scorseseだったらどうしただろう。もっとライブシーンが満載だったのだろうか?と想像したりもした。Ron Howard監督は、当時の有色人種の問題を初めとする社会情勢と、たった五年のビートルズのツアーイヤーを巧みに繋げて来た。涙の理由がそこではない筈。むしろElvis Costelloの「Rubber Soul」に対するコメントの方が涙に近いかも。いずれにしてもビートルズのツアーの苦痛がよく伝わって来る編集だったと思った。
 本編の後に、あのスタジアムライブが見られた。実は、70年代の後半に「Magical Mystery Tour」と併映で劇場上映されている。その時は「シェア・スタジアム」という名称だった。SHEAは誰もがシェアだと思っていたが、SHE-A(シー・エイ)という発音でシェイが本当だったようだが、当時は気にならなかったのだろうか。
 ビートルズは実際、腕のあるバンドだった。それは’61年のライブあたりで確信できた。しかし今回のツアーライブによって、音楽の向かい方の違いが明らかになり、強行スケジュールの中で(本当の)音の届かない演奏をしなければならなかった4人の気持ちを汲み取って、自分の涙になったのだろう。(それでもステージの演奏は魅了的であることに違いない)

 スタジアムライブではボタンをきっちり締めたポールとジョージ。ボタンをしなかったジョン。ボタンをひとつ外したリンゴ。この辺からも「気持ち」が伝わって来るようだった。

Movie: Koe No Katachi (2016)


 今の日本にタイミングよく舞い降りたテーマ。
 偽善とか本音とかの軸ではなく、誰もが心の中にある「つっかえ」をどうコントロールしていくのか。映画では登場人物それぞれに持ち合わせる「つっかえ」が微妙に且つ大胆に絡まる。そこには本人にもわからないモヤモヤした領域があり、そこを共有しながら歩み寄るが、「つっかえ」は解決することなく誤解や苦難を呼ぶ。たぶん、最後が良い感じで終わったとしても、きっと「つっかえ」はとれないのだろう。とれない「つっかえ」。それがテーマだと思った。

 近年のアニメ作品は重くなった。社会性のあるテーマに取り組む点では以前からある。もちろん「エヴァンゲリオン」にしてもそうなのだが、心理描写は以前にないほどに複雑化しているようだ。いい映画だと思う前に、こういう複雑な描写に向き合い、いったい我々は何をすべきかが解決されないところが、今度は自分のほうにも「つっかえ」を作り出してしまう。

2016年9月11日日曜日

Movie: Suicide Squad (2016)


 アメリカの人気映画といえば、Marvelからたくさんヒーローを集めて盛り上げるイメージが消えぬ中で、今回はDCからのヒーローもの。正直、この手の映画は好みでは無いが、5週で3億ドルを稼いだ作品という意味で観ることにした。
 「Sin City」、「Fantastic Four」、「Kill Bill」、「Spider-man」をはじめ、いろいろな作品が脳裏をよぎる。そこには近年の定石ともいえるスタイリッシュな雰囲気をもったヒーローものである。ただ、いきなり知識がまったくない状況でこの映画を観たとしたら、中盤までは取っ付き辛いだろう。一応、登場人物を紹介しつつも流れを作ってはいるが、素早く切り替わるショットに追いつくのが精一杯な感じ。ようやく腰を据えて観れるのは中盤のチームが集結したところからだ。ゾンビのような敵と戦うあたりが一番の見所。その後のラスボスに行き着くまでの過程は、なにか気が抜けた炭酸水のように「何かを失くした」感が…。
 まぁ、それなりに楽しめるとは思うが、もう少しそれぞれの個性を強調した内容にしたほうがよかったのでは?と思うのであった。

 刀をもった人はデビュー作だそうだ。マスクを取った次回作を期待したい。


Movie: Kimi no na wa. (2016)


 思った以上の重量感のある作品だった。「転校生」や「シュタインズ・ゲート」のような恋愛主軸で、入れ替わり、かつ、タイムトラベルものかと思っていた中、ヘビィなテーマが持ち上げられる。以前千人以上の怪我人を出したロシアの隕石落下事件を思い出すのだが、こういった希にでも起こる起こらない事象と、大津波や地震、台風のような一度でも被災したものとの線引きは、基本曖昧である。しかし、一度でも事件として扱われれば、異常なまでの防災意識でメディアが利用されるため、極論化が更に膨れ上がっているのが今の世の中だ。もしも、毎年のように、映画でも登場した隕石落下が発生する世の中が来れば、人の生活はどう変わるのだろうか…、という考えを持ちつつも途中から三年もの時を隔てた二人の接続定義まで感がなければならなくなるため、「(気持ち)忙しい」映画でもあった。
 キャストは俳優さんと声優さんが混在しているのだが、Ryunosuke Kamikiが予想以上に良い感じだったので、違和感なく観れた。