Steve McQueenという監督の特長が認識できる作品であった。例えば小説で言うなら章のはじめを印象づける感覚の風景シーン。これがまたBGMとの相乗効果を形成しつつ、奇妙だったり、穏やかだったりする。かつての映画ファンがスピルバーグのカメラアングルに関心を抱いた時のように、McQueen映画の接写アングルには個性があるのだ。そして重要な場面での唾も飲み込めない空気を漂わせる長いショットもそれにあたる。しかし、最も心動かされたのは、映像のつなぎと曲と雰囲気がコーラスでいうオブリガードのようにオーバーラップする場面。その一方では、時間経過を伝える場面は様々にして潔い。時間の制約がなければこうならなかったのかもしれないが…。
奴隷問題として比較されそうなのが、かつてのテレビシリーズの「The Roots」。これを同テーマの代表作と考えても何十年か前の映像の多くはヒストリカルなものとして扱われてしまっている傾向があった。今回の作品は、むしろ人間としてのあり方を伝え、聖書(神のことは)や自然の営みが人間の存在とのコントラストを強調していたようだ。最近の映画では感じなかった「不思議な効果」を感じ取れたのは実に収穫だったが、トータル的にはブツ切れ感は残った。
久しぶりにPaul Danoのようなクセのある俳優を確認できた点も収穫だった。