最悪の70年代後半ソング、例えばThelma HoustonやGloria Gaynorがちょっと異種の空気を運ぶ…それがこの映画なのだが、ただDavid Bowieの場合はうまい感じで、これは偶然の産物になるのだろうか。曲は船長のお好みらしいが、実は食べ合わせの悪い料理のようでもある。
ちょっと驚いたのが中国の協力。この映画は暗に米中協力の素晴らしさを代弁しているようでもあるが、一方で宇宙開発では欠かせないロシアの存在が微塵も出てこないことを考えると、無駄な政治論議、宇宙開発論議を省きたかったのかもしれない。自分が思ったのは、中国でアイアンマンの人気が高いことを汲み取り、中国市場をある程度意識した作りにしたかった…という感じでは…。
映画を見る限りでは、かつての威信のかかったアメリカの姿ではない。今のオバマ政権のように判断に困る場面が随所に登場する。NASAの責任者の決定も簡単に崩される設定はとかを踏まえてもそう言えるだろう。ただ、この弱さを持ったアメリカの姿こそ、多くの人に見てもらいたかったところだったのかもしれない。この映画の流れと、今の大統領選の筋書きが、どこか似ている感じで面白く見れた。
それにしても映像技術の進歩は素晴らしい。「Alien」の監督としては、同様の宇宙輸送船の中の科学的な扱いの差を強く感じたのではないだろうか。火星の重量は地球の4割程度らしいし、火星時間は地球時間より1日が37分長いとか。こういった違いを入念に描くことは難しいだろう。リアルに描けば、フィクションの面白さに背くことにもなる。この映画はまるで現実にでも起こり得る風に作られているが、あくまで科学創作劇なので、見る側の頭が中途半端にならないように制御しておく必要がある….と思う。
なぜ邦題が「オデッセイ」?。もしかして、以前の作品の「プロメテウス」の流れを作ろうとしている? 今後もR.Scott作品をタイトルをギリシャ神話に掛け合わせるつもり?。まさか。ちなみに中国での公開タイトルは「火星救援」らしい。こっちの方がそれっぽい。原題のように「火星の人」みたいにしたら、そんなに売れないのだろうか?


