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確かに海外スタッフにより日本映画がかつての欧州映画のような雰囲気をもたらしている。背景は60年代なのだが、現代から60年代を見るようなスクリプトではなく、60年代に観客を連れていく前提のスクリプトとして捉えることができた。それはTran Anh Hung監督の接写と多様なアングルがそうさせるのかもしれない。印象的だったのが波の音と、音楽で叫び声をかき消すタッチ...。新しいというより、無性に懐かしく思えてならなかった。
原作はよく知らないが、映像はJohn Lennonの世界観に近づこうとしている感じがする。映画ではNaoko, Watanabe, Reikoが違う方向を見ている場面がでてくる。それそれは近い場所にいるのに、まるで目を合わせるのが辛いかのごとく。ここにひとつのヒントがあった。JohnのAnd when I awoke, I was alone...は以前よりも重たくなったのであった。
信念があったはずなのに知らぬうちに世の中にはぐらかされる自分がいたりする。目標がひとりでに形を変えてしまう。なんとか元にもどろうとするのだが、元がわからないところまでになってしまっている。悩み出すとき、ふと思う。「ちょっと待て。悩むところを間違ってないか?」
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