今にすれば「Private Ryan」や「Band of Brothers」はヨーロッパ戦線を描いたベンチマーク的な映画と言ってもいいかもしれない。今回は戦車VS戦車のアクションが見物という噂もあり、どちらかとえいば、史実+リアル表現よりも70年代に流行した戦争アクションに近いものと想像していた。
しかし実際は、観ているうちに「The Poseidon Adventure」の印象が脳裏に入り込んで来てしまい、戦争ものというよりも脱出ゲームのような感覚で観てしまった。
ストーリーを動かす2つの会話の場面がある。最初はテーブルを囲む場面。ここではそれぞれの人物像が浮き彫りになる。ドイツの女性が無情に殺されるのか?という心配も、ここでは些細な事として追いやられる。次は十字路でスタックした戦車の側での会話。先ほどのテーブルの会話では明確に出せなかった答えをここで出すようでもあり、同時に向かえる夜がその心理を代弁している雰囲気を出す。この映画、ベタなストーリー展開に思いがちだが、小技が色々効いている。
つまり、猛獣の檻に入れられた場面で「平和説法」が通じるかという疑問に近いものがあり、無論、人間がやっていることなのだが、人間だからやらざるを得ない不条理の構造がここにある感じを受けた。
戦車同士の対決は4対1で数では有利の中で、3両を失うほどの苦戦。この場面によってこの映画が描こうとする制圧が如何に難しいのかの表現にもなっておりなかなか面白かったし、一番だったのは、弾道がレーザー砲のように映される部分。これまでの戦争の怖さ以上の現実と非現実の境の言わばラグランジュ点のような印象だった。