Some footage grabs people's heart. And it is the wonderful prowess of screenplay.

前半は特に心に響く場面が無い。しかしそれは後半のための「仕掛け」だからである。Hannaの態度に過去の嫌疑が掛かる場面は、実にさり気無く通り過ぎる。それからMichaelとHannaの家族構成を含めた棲む場所の違いもポイントとなるのだ。
1958年~1995年に及ぶ愛と人々の生き様。前半で置かれた多くの「点」があるのだが、中盤からそれらを結ぶ「線」にあたる話が登場する。ひとつはProfessor Rohlの「法」の話ではなかっただろうか。戦争の時代と平和の時代の中間にきっちりと2分することはできない。法律もしかりで裏を表に覆すこともできない。ましてや心の問題は未知数だ。法廷における疑惑の記録について被告となったHannaは「自分が書いた」と認める場面がある。この場面で戦後およそ20年経っていて尚も強者と弱者の法則が働いているところは衝撃だ。遣る瀬無さまで感じたものだ。法律を学ぶものが感情をぶつける異様な場面もある。工事も進み、新しく平和になりつつなるベルリンに不思議な歪んだ部分が目立ちだす。そして、終身刑となり収容されたHannaの真実が明かされる....Michaelの送ったカセットテープによって。
Ralph Fiennesは「Schindler's List」でGoethを演じた人だけに、実に感慨深い。この人でなくてはならない確信まで感じた。一方のKate Winsletはメーキャップの力もあるのだろうが、苦痛を背負った表情のままでほぼ全編を演じるのだから、もう凄いの一言しか出ない。流石「Billy Elliot」の監督Stephen Daldry。この映画は素晴らしい。
余談ながら、この映画の風景の場面も要チェックだ。ヨーロッパの建物や風景が綺麗に見えるのは、余計なものを配置しておらず、拘る部分は徹底的に拘り、空間(距離)で得られる効果と統一性があるからだろう。日本では密集と個々の雑多性が綺麗な感覚から遠ざけているのかも...この映画ではそんなところも伝えてくれた。
トルストイの「戦争と平和」はこれからも読んで語り継がれなれればならない話かもしれない。