Do you know "Japan"?. This is a "Japan" movie. So smell is more than necessary.

この映画、不思議なつくりである。時間の経過とともに新都庁が映し出されるものの1970年代という時空から脱し得ない。人物の雰囲気も変わらない。もしそれを「些細な部分」と笑い飛ばされるならば、この映画の「些細」で動かす心の表現が意味を成さない。扱われるものは極めて繊細である。林静一も登場するのだから。漫画と人生と心の問題をシンクロさせた安部慎一の人物像。それは数年前のジョニー・キャッシュの伝記のような大味なものではなく、当時の「今からは想像もつかない」四畳半的ヒーロー像の典型でもある。後半で映画は足跡に重点を置いた様な感じがして、異臭から遠ざかったのは残念だが、一人一人の考え方が正論にも極論にもとれた頃の日本が垣間見れた。
この頃の漫画は凄いと思う。「静で動を表す」と同時に「性で道を現す」。書き込まれた背景。レアリズムの絶頂を求めたかのような画風は閉鎖的な大人の空間からの抜け道でもあったのかもしれない。
本当は、多くの人がこのような映画に縋りたい気分ではないのだろうか。最早電子物質で囲われた今の世の中で心を揺するものは皆無。しかし、この映画のような場面に遭遇すれば自分を掘り起こせるような気にもなる。ある意味「逃げ」。この「逃げ」な気分こそ充実感、これが現実。