2013年1月16日水曜日

Movie: Les Misérables (2012)


ヴィクトル・ユーゴーは果してミュージカルという形を望んでいたのかどうか?に自分的関心が高まるのだが、なんだかんだでSusan Boyle盤でも話題になった”I dreamed a dream"などの有名曲がいくつも含まれている点を無視はできない。

 過去のミュージカルと比較して悲劇展開のなかの勇気ある人間像はパターン化されているにしろ、音楽という疎遠な物語にしてこれだけ音楽的なものも珍しい。いわばウエストサイドの硬さと柔らかさとの共存にも通じる部分がある。自分の感性と合わない点をあげるならば、台詞を歌にする必要の云々で、無理やり感があったこと。
 ところでトップクラスの俳優がこれだけ歌が上手いと逆に違和感さえ覚える。日本でも声優などにはマルチタレント的なアプローチが顕著だが、HathawayやJackmanのビブラートの前では、それらがまやかしにも思える。

 ラストでは涙する観客もいた。人間の持っている根っからの部分として、例えばかつての天安門事件のような行動の本質は決して社会体制の善悪そのもののには無い。それはオセロの黒白が逆転しても同様のことが起る可能性がある。そうなれば、涙の裏にあるものは何なのだろう?
 印象的だったのは、死ななければ平等は得られない...的な表現。ここはもう少し考えてみるに値する。
 天国や地獄が人間が決めた行動の法を基軸にする以上は、「神の下す運命」という言葉自体も人間の拘りにすぎない。すべては国家や民族に依存しない自然と接したときの人の心とその成り行きにあると思う。つまりは観客の涙は「(まったく他人から影響を受けない)人間らしさ」を取り戻したい欲求にあるのではないのか?
 その意味でもラストシーンには何層も重なった意味があると感じた。
 そして、なぜだか最後はエル・グレコ絵画の世界観が頭を埋め尽くした。