この映画で思い出したのが「Thank You for Smoking」という映画。難しい内容ののようで理屈は簡単だということを面白く擬似的表現でスクリーンに映している感じがとても印象深い。だから話の中で重要なワードとなるCDOやCDSの位置付けが容易に飲み込める。
また、進行がスタイリッシュであり、現実のとげとげしい点を削り取った感じは理解できた。ただ、潔さの塊のような感じが日本人のひとりとしては吸収しづらい面がある。例えば、日本でこういった映画を制作するなら、きっと暗く悩んだ世界観が全面に出てきると予想できる。そう言った点では「新鮮」なのかもしれない。
エンドロールでは1927年のミシシッピ洪水による悲哀を歌ったブルース曲「When The Levee Breaks」がLed Zeppelinのおなじみのチューンで流れる。自然災害にしろ、人的災害にしろ、人間は幾度となく予想もしない不幸を経験してきているが、人間の教訓として心に留めておきたいはずが、必ずまた同じ運命を辿ることになる。そんなカオスな部分をZeppelinのハードなサウンドで訴えているような印象であり、意味深い終わり方だった。
一番印象に残ったのは、Brad Pitt演じるBenのはしゃぐ2人を制する時のセリフ。確かに、笑っている人の裏側では多くの人が泣いている現実こそ、この映画から汲み取らなければならない点であることは間違いない。穏やかな波は平和だが、面白さがなくなると無理やりでも波を起こすだろう。そこに金儲けが絡めば、多くの人を飲み込むくらいの津波まで起こしかねない。そういう意味で人間の凄さと愚かさを磨り潰したような脚本になっていたことを評価したい。
余談だが、日本食レストランNOBUへのこだわりが、いまいちよくわからなかった。それでもこのチェーンはラスベガスを始め世界の主要都市にあることに驚いた。