2009年2月15日日曜日

Movie: Vicky Cristina Barcelona (2008)


Adventure itself drops for daily life when we continue having an adventure against daily life.


 ミュージカル/コメディ部門で本年度のゴールデングローブ賞を獲得した作品。しかしこの豪華な面々はどうだ。バルセロナを舞台にRebecca Hall、Scarlett Johansson、Javier Bardem、Penélope Cruzそれぞれが芸術の町バルセロナの風のようなサラリとした接点で、物語は奇妙な方向へ進展する。Woody Allenのタッチは健在。時間の度に変わる中心人物。Allenは場面場面を巧みに切り替えつつも役者の灰汁を残さず、中継のカメラを切り替えるかのように潔く繋げている。特にバックに流れるスパニッシュ・ミュージックと、ディスカバリー・チャンネルのようなナレーションは面白い。

 Javier Bardemはオイシイ役柄だ。見知らぬ人に「観光とワインとセックスで楽しまないか?」などと簡単に声を掛けられれば、人生は楽しそうだ。映画の裏側にはこんな現実とはかけ離れたような構造がある。よっていずれは現実を再認識する時期がくるのもわかっているだろ?といった設定なのだ。

 注目は、興奮するとスペイン語で主張するPenélope Cruz演じるMaria Elena。「No Country for Old Men」で強烈な印象を与えたJavier Bardemのお株を奪うような雰囲気を作り出している。そでもWoody Allenは場面を致命的な状況へ陥れない。たとえ拳銃が登場しても深刻に見えない。結局「Vicky Cristina Barcelona」というタイトルとバルセロナの美しいシーンが象徴する形で幕を下ろした。これはこれでスタイリッシュだと思う。

 この映画と関連して、深刻な場面を含みながら温かさを浮き彫りにする映画、例えばPedro Almodóvarの「Volver」やWoody Allen「Scoop」などを思い出した。ヴァーチャル表現やバイオレンス表現にリアル度のウエイトが置かれている昨今で、こういった技法を使った映画にもっとスポットライトが当たることを望む。邦題は、「それでも恋するバルセロナ」。